宇宙の質量の約25%を占めるとされながら、これまで直接観測されたことのなかった未知の物質「ダークマター」を、ついに人類が“目撃”した可能性が浮上しました。
東京大学の戸谷友則(とたに・とものり)教授の研究チームが、NASAのフェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡の15年分の観測データを解析した結果、天の川銀河を取り囲む「ハロー状」の強力なガンマ線放射を検出したといいます。
このガンマ線のエネルギー分布と強度は、理論上ダークマターが衝突・消滅した際に放出されると予測されてきたものと一致しており、戸谷教授は「これはダークマターを直接観測したと考えてよい」と発言しています。
重力でしか存在を確認できなかった「見えない物質」
ダークマターは、可視物質の約6倍の質量を持つとされ、銀河の回転速度や宇宙の大規模構造の形成など、宇宙の進化を左右する重要な存在です。
しかし、電磁気力とほとんど相互作用しないため、光を反射・吸収・放射せず、これまで重力の影響だけからその存在が推定されてきました。
多くの理論では、ダークマターは「WIMP(弱く相互作用する重い粒子)」と呼ばれる未知の粒子から成ると考えられています。
これらの粒子は通常の物質とほとんど反応しませんが、互いに衝突・消滅した際にガンマ線を放つと予測されてきました。
銀河中心とは別の「ハロー状シグナル」
フェルミ望遠鏡は、銀河中心から放射されるガンマ線の過剰放射(GCエクセス)を約20年前から観測していました。
しかし今回発見されたのは、銀河中心とは異なり、銀河全体を薄く包み込む広範囲のハロー状のガンマ線放射です。
しかもそのエネルギーは、従来知られていた銀河中心の放射より10倍も強力で、既存の恒星やブラックホールでは説明できないレベルだといいます。
戸谷教授は「銀河中心の放射は銀河の核に集中しているが、今回の信号は銀河のハロー全体に広がっている。これはダークマター由来である可能性が極めて高い」と語っています。

引用;東京大学 大学院理学系研究科・理学部
専門家の評価と慎重な反論
この研究について、ドイツ・ライプニッツ天体物理学研究所のダークマター専門家モールツ・ムル博士は、「既知の天体ではこのレベルのエネルギー放射は説明できず、ダークマター仮説を強く支持する重要な成果」と評価しています。
一方で、ジョンズ・ホプキンス大学のジョー・シルク教授は「まだ結論は早すぎる」と慎重な姿勢を示しています。
もし理論通りであれば、ダークマターが豊富な近傍の矮小銀河でも同様のガンマ線シグナルが確認されるはずだと指摘します。
さらに、これらの強力なガンマ線は、約100億年前に銀河中心の超大質量ブラックホールが引き起こした巨大爆発によって形成された「フェルミ・バブル」と呼ばれる構造内部で、高エネルギー粒子が磁場に捕獲された結果である可能性も否定できないとされています。


「初の直接観測」か、「別の宇宙現象」か
戸谷教授自身も、論文(Journal of Cosmology and Astroparticle Physics掲載)において「さらなる観測が必要」と慎重な姿勢を示しています。
今後、矮小銀河など別の領域でも同様のハロー状ガンマ線が検出されれば、ダークマター直接観測の決定的証拠となる可能性が高まります。
それでも、これまで間接的にしか捉えられなかった宇宙最大級の謎に、ついに「視覚的な証拠」が与えられたかもしれないという事実は、宇宙物理学にとって歴史的な一歩といえるでしょう。
ダークマターの正体解明は、宇宙の成り立ちそのものを根本から書き換える可能性を秘めています。
人類は今、ついに「見えない宇宙」の扉を開こうとしているのかもしれません。
引用元:Daily Mail
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