世界中の天文学者を数か月にわたって魅了してきた恒星間彗星「3I/ATLAS」が、2025年12月19日未明、地球への最接近を無事に終えました。
日本時間では同日午後にあたるこのタイミングで、3I/ATLASは地球から約2億7000万kmの距離を通過し、現在は太陽系外縁へ向かって高速で飛行を続けています。
この距離は一見「接近」とは言い難い数字にも見えますが、実際には地球と太陽の平均距離のほぼ2倍に相当し、天文学的には十分に近い通過とされています。
科学的な安全性は早い段階から確認されており、地球への影響や衝突の危険は一切ありませんでした。

地球通過後は木星、土星、天王星へ
地球を離れた3I/ATLASは、現在木星方向へと進路を取っています。
次の大きな節目は2026年3月16日で、この日に木星から約5300万kmという比較的近い距離を通過する予定です。
これは木星の重力圏(ヒル半径)に近い距離であり、軌道力学的にも注目されています。
その後、2026年7月には土星の軌道付近を通過し、2027年6月には天王星の軌道を横切ります。
さらに2028年には海王星の軌道付近を、時速約22万1000kmという猛烈な速度で通過。
2029年4月ごろには冥王星の軌道を越え、2030年代半ばには太陽系を完全に離脱し、再び恒星間空間へ戻ると予測されています。

3I/ATLASとは何者なのか。史上3例目の恒星間天体
3I/ATLASは2025年7月1日、チリに設置されたNASA資金提供のATLAS望遠鏡によって発見されました。
軌道を逆算した結果、この天体が太陽系外から飛来した「恒星間天体」であることが判明します。
これは、2017年の「1I/オウムアムア」、2019年の「2I/ボリソフ」に続く、史上3例目の恒星間天体の確認です。
天文学者たちは、3I/ATLASが約80億年前、私たちの太陽系が誕生するよりも前に、別の恒星系で形成された可能性が高いと見ています。
つまり、この彗星は「人類が間近で観測できた、最古級の物質」のひとつであり、銀河の歴史を知る手がかりとして極めて貴重な存在なのです。

火星と太陽への接近。観測ラッシュの数か月
3I/ATLASは地球接近前にも、いくつかの重要なポイントを通過してきました。
10月3日には火星へ約3000万kmまで接近し、火星周回軌道上のNASA探査機が観測を実施。
続く10月29日には太陽へ約2億1000万kmまで近づき、近日点を通過しました。
この間、地上望遠鏡だけでなく、火星周回機や宇宙望遠鏡までもが観測に動員され、ガス組成や塵の放出、尾の形成などが詳しく調べられました。
NASAは通常、火星表面を観測している探査機の観測モードを切り替え、3I/ATLASの分光データを取得しています。
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「宇宙船説」は否定的。彗星として自然な挙動
一部では、3I/ATLASを「異星文明の宇宙船ではないか」とする憶測も飛び交いました。
しかし、専門家の多くはこれに否定的です。
オックスフォード大学の天文学者クリス・リントット教授は、「これまでに観測された挙動は、太陽に近づいて加熱され、ガスと塵を放出する活動的な彗星として十分に説明できる」と述べています。
観測では一酸化炭素、水蒸気、微量のニッケルなどが確認されており、既知の彗星と矛盾しない成分構成だとされています。
また、インペリアル・カレッジ・ロンドンのマシュー・ゲンジ博士も、「軌道変化やガス噴出は彗星では一般的な現象であり、人工物を想定する必要はない」と指摘しています。

“焼きアラスカ”のような内部構造?
興味深い仮説として挙げられているのが、3I/ATLASの内部構造です。
リントット教授は、「表面は宇宙線や長年の宇宙環境で焼き固められた“硬い殻”のようになっており、その内側に新鮮な氷が残っている可能性がある」と説明します。
これは「焼きアラスカ(外側が焼けて中が冷たいデザート)」に例えられ、太陽接近によって外層が徐々に削られながら、内部構造が明らかになっていく過程が、今後の解析で重要になると見られています。
次なる課題は「恒星間天体への備え」
今回の3I/ATLAS通過で得られた最大の教訓は、「恒星間天体は決して珍しくないが、発見と対応が遅れがち」という点です。
理論上、銀河には無数の恒星間天体が存在すると考えられており、これまで見逃されてきただけだとされています。
今後は、完成したばかりのベラ・C・ルービン天文台などの本格運用により、こうした天体がより頻繁に見つかる可能性があります。
ケント大学のマーク・バーチェル教授は、「将来的には、あらかじめ宇宙空間に待機する迎撃・観測用探査機を用意すべきだ」と提案しています。
恒星間天体は、銀河形成や他の恒星系の進化を知るための“天然のサンプル”です。
3I/ATLASはすでに太陽系を去りつつありますが、そのデータ解析はこれからが本番だと言えるでしょう。


引用元:DailyMail
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