3I/ATLASは「生命」を運ぶ箱舟かもしれない――有機分子に満ちた驚異の化学組成が判明

恒星間空間から飛来した天体「3I/ATLAS」をめぐり、生命の起源に関わる重要な発見が報告されました。

2025年12月に発表された最新研究によって、この天体のガス状の外層に、生命の材料となる有機分子が非常に豊富に含まれていることが明らかになったのです。

この成果は、「生命の材料は宇宙から運ばれてくる」という仮説に、強力な裏付けを与えるものとして注目されています。

目次

arXivに公開された最新研究

今回の研究は、ネイサン・X・ロス氏を中心とする国際研究チームによって行われ、現在は査読前論文としてarXivに公開されています。

将来的には『The Astrophysical Journal Letters』への掲載が予定されている重要な研究です。

観測には、チリ・アタカマ砂漠に設置された電波望遠鏡「ALMA(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)」の補助装置であるAtacama Compact Arrayが用いられました。

これにより、3I/ATLASの周囲に広がるガスの成分分布が、これまでになく詳細に解析されています。

3I/ATLAS大気中のHCN(シアン化水素)とCH3OH(メタノール)ガスの分布図
引用:mysteryplanet

生命の材料となる2つの分子を検出

研究チームが注目したのは、メタノール(CH3OH)とシアン化水素(HCN)という2種類の有機分子です。

これらは、極低温の宇宙空間に存在する氷の塵の表面で生成され、アミノ酸や糖といった、より複雑な有機物の前駆体になると考えられています。

観測の結果、3I/ATLASのコマ(ガス状の外層)には、これらの分子が高濃度で存在していることが判明しました。

特に注目すべきは、CH3OHとHCNの存在比です。

この比率は、「これまでに測定されたほぼすべての彗星の中でも、最も有機分子に富んだ値のひとつ」であると評価されています。

例外的にこれを上回るのは、太陽系内の特異な彗星C/2016 R2(PanSTARRS)だけだといいます。

アヴィ・ローブ氏が語る「生命前駆化学」

この研究について、ハーバード大学の天体物理学者アヴィ・ローブ氏は、次のように解説しています。

「メタノールとシアン化水素は、星間空間の氷の塵で生成される一般的な分子であり、生命の起源に関わる有機化学反応の重要な出発点です」と述べています。

アミノ酸や糖といった生命分子は、こうした単純な有機分子が段階的に結合して生成されると考えられており、3I/ATLASはまさにその「材料庫」を搭載して飛来した存在だという見方も成り立ちます。

アヴィ・ローブ教授
引用:Wikipedia

「ソフト・パンスペルミア」仮説を強く支持

今回の研究は、いわゆる「ソフト・パンスペルミア(分子パンスペルミア)」仮説に強力な根拠を与えるものです。

これは「生命そのもの」ではなく、「生命の材料となる有機分子」が、彗星や小天体によって惑星へ運ばれるという考え方です。

恒星間彗星は、他の恒星系の極低温領域で形成され、その後、何億年、何十億年という時間をかけて銀河を漂います。

そして若い惑星系に接近、あるいは衝突することで、豊富な有機物を地表にもたらす可能性があります。

研究者たちは、3I/ATLASのような天体を「宇宙のタイムカプセル」と表現しています。

太陽系誕生以前の化学環境をほぼそのまま保存した状態で、別の恒星系から運ばれてきた存在だからです。

太陽系外でも「生命の化学」は普遍的か

今回の発見が持つ最大の意義は、こうした生命前駆物質が、太陽系だけに特異なものではない可能性を示した点にあります。

3I/ATLASは明らかに太陽系外起源の天体です。

それにもかかわらず、その内部に「生命の材料」が極めて豊富に存在していたことは、生命の化学が宇宙全体で普遍的に起きている現象である可能性を強く示唆します。

これは「地球生命は特別な条件の産物なのか、それとも宇宙に普遍的な現象なのか」という根本的な問いにも関わる重要な示唆だといえるでしょう。

生命そのものが見つかったわけではない

ただし、今回の研究は「生命の存在」を直接示すものではありません。

検出されたのは、あくまで生命誕生の材料となる有機分子であり、細胞や微生物といった「生きた存在」ではない点には注意が必要です。

現時点では、3I/ATLASが生命を運んできた証拠はなく、「生命が生まれ得る化学環境の材料を運搬していた可能性」が示された段階にとどまっています。

2025年12月2日午前1時39分、アフリカ、ナミビアのティボリ・ファームにある30cm望遠鏡から撮影されました
引用:mysteryplanet

恒星間天体3I/ATLASから、生命の前駆物質となる有機分子が極めて豊富に検出されたことは、生命の起源研究にとって大きな一歩といえます。

この発見は、彗星が惑星へ有機物を運ぶ「ソフト・パンスペルミア」仮説を強く支持するものです。

生命が宇宙全体でどのように広がっていくのか、その謎を解く手がかりとして、3I/ATLASは今後も重要な研究対象であり続けるでしょう。


引用元:mysteryplanet

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