アルゼンチンのミステリー系メディア MysteryPlanet.com.ar が2026年9月13日、ギザの大ピラミッドに数学的な「コード」が埋め込まれているとする研究を報じました(原文)。
高さ・底辺・傾斜が、古代エジプトの書記が使っていた二進分数に基づく計算を含んでおり、月の周期、円周率、黄金比、肉眼で見える惑星と一致するという主張です。
何が主張されているのか
提唱者は独立研究者のセフィ・レヴィ氏。特定の比が27.5(月の近地点の間隔に近い)や70(シリウスが見えなくなる期間、および伝統的なミイラ化の工程)を示すとしています。
コンピュータで10万基のピラミッドをシミュレートしたところ、大ピラミッドと同程度の数値的一致に達したのは2.4%だった、という統計的な検証も添えられています。
ピラミッドは知識の容器ではない。石と化した知識そのものだ。
セフィ・レヴィ氏の論文より(筆者訳)
出どころをたどると
この話は三段階を経てここに届いています。
原典はレヴィ氏が SSRN に投稿した論文で、「ゼップ・テピ」と題した連作の一部です。それを英 Daily Mail が記事にし、MysteryPlanet がスペイン語で報じた、という流れです。
ここで押さえておきたいのが、SSRNは査読前論文(プレプリント)のリポジトリだという点です。学術リポジトリに掲載されたと聞くと権威がありそうですが、SSRNは投稿を受け付ける場であって、内容の検証を保証する場ではありません。査読を通った研究ではない、ということです。
なぜπや黄金比が出てくるのか
実はこの現象には、古代エジプト側の説明があります。
エジプトには「セケド」という傾斜の単位がありました。1キュビット=7パーム、1パーム=4ディジットという体系で、傾斜を「1キュビット上がるごとに横へ何パーム」で表します。大ピラミッドのセケドは5.5(5パーム2ディジット)で、傾斜角にすると51.84度です。

ここから自動的に2つのことが起こります。
π が出る理由。 22/7 は円周率のきわめて良い近似値です。そしてエジプトの体系は1キュビットを7等分している。7という数字が両方に共通しているため、比を取ると円周率に近い値が現れます。
黄金比が出る理由。 7 ÷ 5.5 = 1.2727。黄金比の平方根は1.27202。ほぼ一致します。
セケドを使った設計は、リンド数学パピルスの練習問題として実際に残っています。つまり当時のエジプト人が実務の傾斜計算をした結果として、πと黄金比が副産物的に現れたという説明が成り立つわけです。
数学者からは、そもそも数値の偶然の一致を見つけること自体はさほど難しくなく、一致の存在が必ずしも有意性を示すわけではない、という指摘も出ています。10万基のうち2.4%は、裏を返せば2,400基が同等以上に一致したということでもあります。
160年前にも、ほぼ同じ主張があった
この手の説は今回が初めてではありません。
19世紀、イギリスの出版経営者ジョン・テイラーが「ピラミッドインチ」という尺度を提唱しました。1ピラミッドインチを北極と南極を結んだ距離の5億分の1とし、これを1年に対応させる。すると内部通路の窪みや分岐が、歴史上の事件の年代と一致するというものです。
女王の間がキリストの誕生、王の間が第一次世界大戦、1945年を示す地点に大きな窪み──といった具合に読み解かれ、人類は「地下の間」へ向かっていて2032年に底に達する、とまで語られました。
構造は今回とまったく同じです。 建造物の寸法に数値を当て、意味のある数字との一致を探す。今回の説は、その最新版と見ることもできます。
それでも見どころはある
批判的に見ましたが、この説には面白い部分もあります。
レヴィ氏はギザの幾何学を「シェムス・ヘル(ホルスの従者たち)」の伝承と接続しています。トリノ王名表やピラミッド・テキストに登場する存在で、サハラが緑地だった時代にモーリタニアのリシャット構造(サハラの目)を拠点としていた、という筋書きです。
ここは考古学的な裏づけのない領域ですが、サハラ湿潤期という実在の気候現象と、記録に残る伝承を接続しようとしている点は、単なる数秘術より踏み込んでいます。
ピラミッドと日本を結びつける説も古くからあります。『正統竹内文書』では、ギザの三大ピラミッドのメンカウラー王がギリシャで「ミケイリノス」と呼ばれていたことと、古代の出雲大社を建設した「ミケイリノノミコト」という役職名の一致が指摘されています。
まとめ
今回の報道を整理すると、こうなります。
- 査読を経ていないプレプリントが原典
- πと黄金比の出現には、セケドという既知の説明がある
- 同型の主張は160年前から存在する
- 一方で、伝承と古気候を接続する切り口には独自性がある
「ピラミッドに秘密が隠されている」という話は、これからも定期的に登場します。そのたびに出どころと、一致が偶然で説明できるかどうかを確認すれば、面白さを損なわずに付き合えます。
出典と確度
- 未確認|MysteryPlanet.com.ar(2026年9月13日)が報じた内容。同記事は英 Daily Mail を情報源としています
- 未確認|セフィ・レヴィ氏の論文(SSRN、査読前)
- 確認済み|セケドに関する記述(リンド数学パピルスほか)


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