「トランプ当選を予言」とされたノストラダムスの詩――選挙2日前には“クリントン勝利”と読まれていた

古代史やUFOの話題を扱う英語サイト Ancient Code が、2026年9月14日付の記事で「ノストラダムスはドナルド・トランプ氏が米大統領になることを予言していた」とする説を紹介しました(原文)。16世紀フランスの占星術師ノストラダムスが残した四行詩のうち、「第3巻81番」などが同氏の当選を言い当てていた、という内容です。

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Ancient Codeが紹介した「的中」の根拠

記事はまず、ノストラダムスを史上もっとも正確な予言者の一人と位置づけ、月面着陸、ヒトラーの台頭、アンリ2世の死、ケネディ兄弟の暗殺などを過去の的中例として挙げています。

中心に据えているのは、「恥知らずで大胆な、大声でわめく者が、軍の統率者に選ばれる」と読める一篇です。この「選ばれる」者をトランプ氏とみる解釈が、選挙での勝利と重ねて紹介されています。さらに第1巻40番の「狂気を隠す偽りのトランペット」という一節も、英語の trumpet と同氏の名前が重なることから、同じ人物を指すとされています。

記事は「50番」とされる詩にも触れ、「大都市の共和国」が「トランペット」の命令で費用のかさむ軍事行動に乗り出すという読みを、核戦争の暗示とする見方を紹介しています。そのうえで、次のように書いています。

「ノストラダムスはこの結果を予言していた。トランペットが勝った後に大戦争が起きると予言していたのだ! 彼はそれを400年前に予言していた!」

Ancient Code「Nostradamus predicted Donald Trump as being President of the US」Ancient Code Team、2026年9月14日(筆者訳)

後半には「2016年以降」の予言として、2大国の間で27年続く戦争、ヴェスヴィオ火山の大噴火、米国西部の巨大地震、子どもを持つのに許可が要る社会、世界経済の崩壊などが並びます。ただし、それぞれが何巻の何番にあたるのかは示されていません。記事は、当たるかどうかは待つしかない、という趣旨で締めくくられています。

選挙の2日前、同じ詩群は「クリントン勝利」と読まれていた

この説の出どころをたどると、2016年の大統領選直前のテレビ番組に行き着きます。米国のHistory(旧ヒストリーチャンネル)は、投票日2日前の11月6日に特番「Nostradamus: Election 2016」を放送しました。番組紹介は、予言に「女王」「金髪の者」と「恥知らずで大胆な大声の者」との対決が描かれている、という構成でした。

番組の結論部では、米国ノストラダムス協会の会長が「金髪の者」をクリントン氏とみて、同氏の勝利を予想したと報じられています。番組は第1巻86番をトランプ氏の勝利と読む別の解釈も併記しており、放送の時点では、同じ詩群がどちらの勝利にも読める材料だったことになります。

2日後にトランプ氏が勝つと、「大声の者」の詩は的中例として英語圏や仏語圏へ広がり、クリントン勝利の読みは抜け落ちました。今回たどれた範囲では、これがこの説の最も古い経路です。

Ancient Code の記事も、この延長線上にあります。公開日の表示は2026年9月14日ですが、本文はトランプ氏がクリントン氏に勝った直後の書きぶりで、「2016年以降の予言」という項目も残っています。ページに埋め込まれた更新日時は2025年6月9日で、公開日より前です。2016年当時の文章が、日付だけ新しくなって再び出回っていると考えるのが自然ではないでしょうか。

フランス語の原文に戻ると

第3巻81番の原文は「Le grand criard sans honte audacieux, / Sera esleu gouverneur de l’armée」で始まります。直後の82番にはフレジュス、アンティーブ、ニースと南仏沿岸の地名が並びます。ノストラダムス自身、国王アンリ2世への献辞で、予言の対象をヨーロッパ、北アフリカ、小アジアの一部としていたとされます。

第1巻40番の「偽りのトランペット」も、原文はフランス語の「La trombe fausse」です。「Trump」と綴りが重なるのは、英語に訳したときだけです。

両詩とも1555年の初版の収録範囲に入っており、2016年まではおよそ460年で、記事の「400年前」とも合いません。的中例に挙げられた「アンリ2世の死」も、生前に取り沙汰された詩(第3巻55番)と、現在結びつけられている詩(第1巻35番)は別物だとされています。有名な的中例ほど、後からよく合う詩へ付け替えられてきた経緯があるようです。

2026年は「26番の詩」が読まれている

こうした後付けは、いまも続いています。2026年に入ってからは、各巻の26番を「2026年の予言」とみなす読み方が英語圏で広がっています。英国のSky HISTORYは、この番号読みを、整ってはいるが本文に根拠のない解釈だと評しています。2026年5月には、2026年への割り当てはどれも歴史的・言語的に確かめられていないと指摘する記事も出ました。

その代表格が、第1巻26番の「偉大な者が昼に雷に打たれる」という一節です。この詩は2016年の時点では、ケネディ兄弟の暗殺を言い当てた例として紹介されていました。同じ一篇が、過去の的中と2026年の予言を兼ねている形です。

中東情勢の緊迫を受けて「2026年予言」が再燃した今春の経緯はこちらの記事で整理しています。数字を年号に重ねる読み方は、1611年周期で文明の中心が移るとするガイアの法則とも発想が近いものがあります。

外れた予言は「数え方の違い」で生き延びる

日本で最も知られたノストラダムスの詩は、「1999年7の月、空から恐怖の大王が降ってくる」(第10巻72番)でしょう。この詩も、外れた後に似た道をたどっています。1999年が何事もなく過ぎると、予言が外れたのではなく、日付の数え方が間違っていたとする説が現れました。

西暦はキリストの誕生を起点にしているが、本来は洗礼を受けた年を起点とすべきだ、という主張です。この数え方に従えば2024年は実は1998年にあたり、「1999年7の月」は2025年7月になる、というものでした。「恐怖の大王」は隕石の落下を指すとも解釈され、同じ2025年7月に隕石が落ちるとする別の警告と重なったことで、時代の違う予言が一致したと受け止められました。

なお、この種の説は「キリスト誕生の年を西暦0年とした」と説明されることがありますが、通常の西暦に0年はなく、紀元前1年の翌年が紀元1年です。そして2025年7月も、空から恐怖の大王が降りてくることなく過ぎました。

結果が出てから決まる「的中」

当たれば的中、外れれば数え方の違い。トランプ氏の詩も、選挙前はクリントン氏の勝利を示すとされ、結果が出てから向きを変えました。詩が未来を指していたのか、読む側が結果に詩を合わせてきたのか。少なくとも今回の記事については、後者の過程を日付つきでたどることができます。


出典

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