アルゼンチンのミステリー系メディア MysteryPlanet.com.ar が2026年9月23日、巨大ガス惑星「がか座β星b(Beta Pictoris b)」の電波が、初めて惑星そのものに結びつけられたと報じました(原文)。「宇宙からの電波」と聞くと宇宙人の信号を思い浮かべがちですが、原文自身も交信ではなくオーロラ由来だと明記しています。
何が報じられたのか
元になっているのは、米ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのケビン・オルティス・セバジョス氏らが9月15日に arXiv へ公開した、査読前の論文です。
観測は南アフリカの電波望遠鏡群 MeerKAT で2025年2月〜2026年5月に4回行われ、毎回電波源が捉えられたとされます。0.85〜3.5GHzの帯域で、強弱を繰り返すバーストと弱く続く放射が記録され、論文は40〜70%という強い円偏波などから、木星や地球のオーロラと同じ「電子サイクロトロン・メーザー」による放射だと解釈しています。
オーロラ由来の電波バーストは太陽系の惑星や一部の超低温矮星で観測されているが、これまで電波の検出が主星ではなく系外惑星そのものに明確に位置づけられた例はなかった。
K. N. Ortiz Ceballos, E. Berger, Y. Cendes「Discovery of radio emission from the exoplanet β Pictoris b」arXiv:2609.16720(2026年9月15日)より筆者訳
この放射は、最も高い周波数から発生源の磁場の強さを逆算できます。3.5GHzまで届いていたことから、惑星bの磁場は少なくとも1250ガウスと見積もられ、論文はこれを系外惑星の磁場強度の初の直接測定と位置づけています。
決め手は「どこから来たか」を突き止めたこと
系外惑星の電波探しで最大の壁は、隣にある恒星との区別です。恒星も磁気活動で電波を出すため、「その方向から来た」だけでは惑星の電波とは言えません。β星bと主星の見かけの間隔は最大でも約0.55秒角しかありません。
チームは視野内にある9個のクエーサーと1個の基準電波源を目印に、画像の位置を天文衛星ガイアの座標系へ合わせ込みました。論文によると、電波源の位置は惑星bと一致し、主星と一致する可能性は系統誤差を含めて4.4σで否定されたとしています。目印を1〜2個ずつ外して計算し直した55通りでも、電波源は惑星bから約100ミリ秒角、主星からは約434ミリ秒角の位置に来たと記載されています。さらに、主星の磁場は上限でも約0.3キロガウスとされ、3.5GHzの放射に必要な強さに届かない点も、主星を外す根拠に挙げられています。今回の成果の核心は、電波をとらえたこと自体よりも、その電波に「住所」を付けられた点にあるといえます。

「初検出」は過去に一度、追試で消えている
とはいえ、この分野の「初検出」には苦い前例があります。2020年12月、欧州の低周波電波望遠鏡 LOFAR の2017年のデータから、うしかい座τ星の惑星bが出したとみられる電波の「暫定的な検出」が発表されました。しかしその後の NenuFAR や LOFAR による追試では同じ信号は再検出されず、2025年1月に公表された64時間分の干渉計観測でも有意な放射は見つからなかったと報告されています。
今回の研究は、4回の観測すべてで電波源を捉え、周波数帯も二つにまたがる点で、一回きりだったτ星の例とは性格が異なります。一方で、弱い点も残っています。惑星と主星を見分けた位置合わせは2026年5月2日の1回分の画像に基づいており、統計誤差だけなら5.2σだった主星の否定は、系統誤差を上乗せすると4.4σまで下がります。解析コードは論文の出版時に公開予定で、データの一部はまだ非公開期間にあるとされます。独立したチームが別の日に同じ位置を確認できるかが、次の焦点になると考えられます。なお、同じ惑星は2023年末にインドの GMRT が低い周波数で探索していましたが、その時は上限値しか得られていませんでした。より高い周波数に切り替えて初めて見えたという点も、追試で確かめたいところです。
7月には同じ系で「第3の惑星」も
がか座β星系は、この夏にも話題になりました。2026年7月15日、ヨーロッパ南天天文台(ESO)は、同じ系を回る第3の惑星「β星d」の発見を発表しています。木星の約2.4倍(β星bは約12倍)の質量で、公転周期は91年、明るさはβ星bの100分の1ほどとされ、地上から直接撮影された惑星として最も暗い部類だと説明されています。
複数の巨大惑星を直接撮影できる系はまれで、今回の電波観測もその条件の良さに支えられています。論文は、45パーセク以内にある5つの惑星系の7つの巨大惑星に同じ手法が使える位置関係にあり、次世代の電波望遠鏡で感度が5〜7倍になれば検出圏内に入るとしています。当サイトでは以前、3I/ATLASの反対尾に見つかった周期的な揺らぎが「信号」ではないかと話題になった件を取り上げましたが、今回は発信源が自然の磁場だと最初から説明されている点が大きく違います。
再現されない信号は、50年近く答えが出ない
再現性の重みを考えるうえで比べたいのが、1977年の「Wow!シグナル」です。8月15日、オハイオ州立大学の地球外知的生命探査で、ビッグイヤー電波望遠鏡が72秒間にわたる非常に強い電波を記録しました。記録を見た天文学者ジェリー・エーマン氏がプリントアウトに「Wow!」と書き込んだことが名前の由来です。
この信号は、その後同じ方向を何度観測しても二度と受信されませんでした。2024年にはプエルトリコ大学アレシボ校のアベル・メンデス氏らが、中性水素のガス雲が強い放射を受けて一時的に明るくなった自然現象だった可能性を示していますが、決着したとは言えない状況です。狭い周波数に集中した一回きりの信号と、広い帯域で繰り返し捉えられた今回の電波は、同じ「宇宙からの電波」でも検証のしやすさがまったく違います。ダークマターを「初めて直接観測」したとされた研究と同じく、今回の成果も追試を経て初めて評価が固まるものと考えられます。
出典
- 一次資料(確認済み・査読前):K. N. Ortiz Ceballos, E. Berger, Y. Cendes「Discovery of radio emission from the exoplanet β Pictoris b」arXiv:2609.16720, 2026-09-15(https://arxiv.org/abs/2609.16720)
- 参照記事:MysteryPlanet.com.ar「Detectan señales de radio provenientes del exoplaneta gigante Beta Pictoris b」編集部(MP), 2026-09-23(原文)
- 一次資料(確認済み):うしかい座τ星系の追試(LOFAR干渉計観測)Astronomy & Astrophysics, 2025-01(A&A)
- 一次資料(確認済み):Turner et al.「Follow-up LOFAR observations of the τ Boötis exoplanetary system」A&A, 2024(DOI)
- 一次資料(確認済み):MPIA「A New Planet in the Beta Pictoris System」2026-07-15(MPIA)
- 参照記事(未確認・査読前の研究の紹介):Wow!シグナルの水素雲説(EarthSky, EarthSky)
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