アルゼンチンのミステリー系メディア MysteryPlanet.com.ar が2026年9月22日、イランの首都テヘラン上空で撮影された発光体の動画と、その正体をめぐる米下院議員の発言を報じました(原文)。
何が報じられたのか
撮影は9月20日の19時30分ごろ(現地時間)、テヘラン市内のアーザーデガーン高速道路付近とされています。同記事は、X に投稿された動画の再生回数が500万回を超えたと伝えています。
記事の後半は、テネシー州選出のティム・バーチェット下院議員の発言です。議員はポッドキャスト番組のインタビューで、物体は地球外のものではなく、米国の軍事技術か、相手を混乱させる心理作戦かもしれないとの見方を示し、レーガン政権の「スター・ウォーズ計画」を引き合いに出したとされています。
同記事はさらに、1976年に同じテヘランで起きたUFO事件と日付が近いこと、9月18日に米国防総省がUAPファイルの第6弾を公開したことにも触れ、国防総省はレーダーの探知について明らかにしておらず、イラン当局も沈黙していると伝えています。なお記事には失踪した科学者に関する議員の発言も含まれていますが、実在の人物に関わる未確認の話のため、本記事では扱いません。
テヘラン、アーザーデガーン高速道路。シャフリーヴァル月29日の19時30分ごろ。正体不明の天体を撮影した。本当に何なのかわからないが、雲の近くにあって特別な光を放ち、何の音もなく空中に浮かんでいた。
Ali Sedaghati 氏の X 投稿(2026年9月20日、ペルシャ語)より。MysteryPlanet の記事に埋め込まれたもの(筆者訳)
出どころを遡ると、話が少しずつ大きくなっている

上の投稿が、たどれた範囲での初出です。イラン暦のシャフリーヴァル月29日は9月20日にあたり、撮影地点・時刻とも報道と一致します。注目したいのは、撮影者本人は「何なのかわからない」と書いているだけだという点です。
ところが MysteryPlanet の記事では、撮影者が「人類のものではない、UFOだと確信している」と語ったことになっており、物体も「巨大な三日月形かV字形の船」と描写されています。この断定的な発言は、記事に埋め込まれた原投稿には見当たらず、どこで語られたものかは特定できていません。
経路を整理すると、ペルシャ語の個人投稿が9月21日に英語圏の速報系アカウントやニュースサイトで広まり、そこへ米議員の発言が加わり、22日にスペイン語圏へ渡った、という流れです。この記事は、その4周目の報道を起点に1周目まで遡ったことになります。
懐疑側はどう見ているか
英語圏の報道は、かなり慎重です。Cybernews は、出回っている動画は14秒ほどで、物体までの距離・高度・速度・大きさはいずれも確認されていないと報じ、SNS上ではドローン、凧、軍用機といった見方が出ているとしています。Israel Hayom は、元の映像や正確な位置情報が欠けていること、スマートフォンのカメラは夜間の遠い光を歪めやすいことを指摘しています。
「音がしなかった」という点も、決め手にはなりにくいでしょう。交通量の多い高速道路沿いから、離れた位置の小型機の音が聞き取れないのは不自然ではない、という見方もできます。
イランで空の光が騒ぎになるのは初めてではありません。2004年には各地で目撃が相次ぎ、国営テレビまで映像を流しましたが、イラン天文学会の会長はロイター通信に対し、金星の見え方と一致すると説明しています。今回は米国とイランの軍事的緊張が続くなかでの出来事で、撮影の数日前には革命防衛隊が米国の無人機を撃墜したと発表したと Insider Paper は報じています。無人機が飛び交う空であることが、どの解釈にも影を落としていると考えられます。
「米国の心理作戦」説の位置づけ
バーチェット議員の発言は、議員自身の推測として語られたもので、裏づけとなる資料は示されていません。一方、原文が触れた国防総省のファイル公開は実在する動きです。2026年5月8日に始まった公開は9月18日で第6弾となり、CBS News によれば71ファイル、うち動画15本で、年代は1952年から2025年に及びます。第6弾の中身はUAP機密ファイル第6弾の記事で整理しています。ただしAAROはこれまで、調査した事例に地球外技術が関わったという検証可能な証拠は見つかっていないとしています。
「正体不明の光は実は米国の秘密兵器」という語り方は、この1年で繰り返し現れています。ベネズエラでの作戦をめぐっても、同じ構図の話が広がりました(ベネズエラで使用された極秘兵器の記事)。宇宙人説も心理作戦説も、物体が普通ではないことを前提にしています。その前提自体が、まだ確かめられていません。
50年前のテヘランで記録されたこと
比較に持ち出された1976年の事件は、性質がまったく違います。9月19日未明、テヘラン北部の住民から空に明るい物体があるとの通報が相次ぎ、イラン帝国空軍はF-4ファントムを2機、順に発進させました。米国防情報局(DIA)経由で伝わった報告によると、1機目は接近中に計器と無線が使えなくなり、離れると回復。2機目は物体から分かれた光が向かってきた際、ミサイルを撃とうとした瞬間に兵装パネルと通信が止まったと記載されています。翌朝、光が降りたとされる乾いた湖底付近を捜索しても痕跡はなく、近くの住民は夜中に大きな音と稲妻のような光があったと話したとされます。
この報告には、DIA の分析官が事例を高く評価した評価票が添えられています。一方で懐疑派のフィリップ・クラスは、最初の光は木星で、残りは機器の故障と乗員の判断ミスで説明できると主張しました。2機目のレーダーが物体を捉えたとする記録をどう扱うかで見解は分かれ、決着はついていません。
1976年にはパイロットの証言、レーダー、軍の報告書がありました。2026年の手元にあるのは、十数秒のスマートフォン動画だけです。共通点は「テヘラン」「9月」「多色の光」の3つにとどまります。1976年の事件を含め、軍が未確認の物体と接触したとされる4つの事例を並べた動画はこちらです(テヘラン事件は5分18秒から)。YouTube:CIAの極秘文書に残された、宇宙人対人間の戦闘記録
まとめ
- 初出はペルシャ語の個人投稿で、撮影者自身は正体を断定していない
- 「人類のものではない」という発言は、拡散の途中で現れたもので出どころが不明
- 距離・高度・大きさはどの報道でも確認されておらず、ドローンや凧の可能性も残る
- 「米国の心理作戦」説は議員の推測で、裏づけは示されていない
出典と確度
- 未確認|参照記事:MysteryPlanet.com.ar「Un misterioso OVNI grabado sobre Irán desata sospechas de una operación secreta con tecnología estadounidense」2026年9月22日(リンク)
- 未確認|初出:Ali Sedaghati 氏の X 投稿(2026年9月20日)。撮影地点・日時の独立した検証はなし
- 未確認|参照記事:Cybernews(2026年9月21日)、Israel Hayom(2026年9月22日)、Insider Paper(2026年9月21日)
- 確認済み|一次資料:米統合参謀本部あて報告「Joint Chiefs of Staff report concerning the sighting of a UFO in Iran on 19 September 1976」(NSA公開、リンク)
- 確認済み|国防総省UAPファイル第6弾の公開(2026年9月18日、CBS News/NewsNation の報道による)
- 未確認|2004年の金星説明:Reuters 配信(NBC News 掲載)
- 推測|「音がしない」ことの解釈、無人機の往来と解釈の関係は筆者の見方
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スマートフォンの普及で、誰でもUFOを撮影できる時代になりました。ただ、撮った場所と時刻の記録が残っていなければ、今回のように後から検証することができません。
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